<お伝えしたい事>
日本の路面店舗エリアを一つのショッピングセンターや百貨店のように考えたとき、
1F正面の華やいだ雰囲気を醸し出し、消費のスイッチをONにする役割を担う最強の街は、やはり「表参道」。
マーケティングの4Pで言うところのプロモーション街、その効果は日本全国からアジアまで波及する。
イベントスペースは、「経済的には賃料効果」、「機能的には集客効果」、を期待でき今の表参道には絶対に必要。
表参道の活性化は、日本の路面店舗の活性化につながるのです。
毎日の様に街歩きをしていると、表参道で気になる光景が目に入ります。
「FOR RENT」の文字、「何も掲示の無い空室」。
普段は空室物件の募集と思いますが、実は少し違います。
イベントスペースの募集看板や、未使用のイベントスペースです。
<イベントスペースのプチバブル>
私が独立開業した2015年、イベント会場は一定数で安定しておりました。
不動産仲介の仕事の延長で、イベント会場探しをお手伝いさせて頂いたことも数回あり、
まだ水面下の募集が多かったように感じております。
その流れはおそらく2017年~2018年頃より変化したようです。
イベントスペースが少しずつ増え始め、イベント会場専門の紹介会社がネット上に出現しだしたのもこの頃だった気がします。
2018年、表参道のAビル1~2Fが募集となった際、複数申込はあるも当方でご提案したテナント1社しか条件に合う企業が無く、そのテナントがある事情で申し込みを撤回すると、次点で契約したのがイベント系のテナントでした。
「1Fの募集物件で、イベント会社に一般テナントが負ける時代が来た!」と、
自身の先読みの鈍さに呆れた事を思い出します。
その後もすごい勢いでイベントスペースは増え始め、
デベロッパーでさえも自社で1Fやビル全体をイベントスペース化し運営する流れも数件認められるぐらいでした。
いつも野生動物の世界で例えると私自身がわかり易いのでお伝えすると、
理由は単純です。
「そこに美味しいエサがあるから!」
つまり、イベントスペースの方が明らかに収益を取れるからです。
<イベントスペースの不動産収益構造>
大雑把に記すと、以下のようなお金の流れが見て取れます。
「例:Bビル一棟貸」
① 月額イベントスペース使用収入:1000万円
(メーカー等がイベント会社に支払うスペース使用料)
② 月額不動産賃借料:500万円
(イベント会社からBビル所有者に支払う賃借料)
③ 営業利益:500万円
(①イベントスペース使用収入:1000万円-②月額不動産賃借料:500万円)
<なぜイベントスペースが、一般テナントと物件の取り合いで勝てたのか?>
やはりこれもある意味単純な理由です。
「ビルオーナーにとり、イベントスペースの方が家賃が高かったから!」
そうは言ってもやはり当初、
ビルオーナーにもイベントスペースに貸す悩みはあったはずです。
私も不動産仲介の現場で、
以下のような質問やつぶやきをお聞きした事があります。
① コンテンツ面
「イベントって変な事をする事もあるのか?」
「イベント内容の拒否権はビルオーナーに無いのか?」
「いきなりたこ焼き屋やラーメンなどの重飲食を営業され、匂いや汚れの被害は無いのか?」
「公序良俗に反したり、
それに反しかねないギリギリのセクシーアニメなど・・・
本当に大丈夫か?」
② 賃貸ビジネス面
「商工リサーチの評点が低い中小企業が多い気がする」
「上手くいかなければ、あっという間に解約されたりしないのか?」
等々・・・・
それでも結果的に、
表参道は「イベントスペースのプチバブル」化していきました。
ビルオーナーにとり、
一般の物販テナントなどに貸すより明らかにメリットがあったからですし、
中には一般テナントからの申込が無く消去法で選ぶしかなかったという例もあります。
そう、皆さんもお感じの通り、一般テナント側の背景もあります。
以前、以下のコラムでも記しましたが、販売チャネルの変化による路面店舗の苦戦です。
007「主要商業エリア(路面店舗含む)」 VS 「Eコマース」の売上比較→「新宿」VS「amazon」の軍配は?
前述のBビル月額不動産賃借料:500万円を一般テナントが提示できれば、
おそらく軍配は明らかだったと思います。
一般的な物販テナントの家賃負担率は、
概ね売り上げの10%~20%と言われております。
となると、500万の賃料を払うのに健全な月額売上は、2500万~5000万円の安定確保が必要となるのですが、
その売り上げが取れないと判断するしかないのが、
今の販売チャネル構造にあるのです。
<表参道のイベントスペースは今後どうなるのか?>
短期的には苦戦し、中長期的には一定数で安定すると予想しております。
楽観的かもしれませんが、
またそうあって欲しいという希望的観測かもしれませんが、
やはり上記の様に予想しております。
最も期待したいのが、今後の消費の一端を担うはずの若い世代の方々です。
コロナ関係の分析には触れませんが、
私の知る若い世代の方々は既に順応してきていると日々感じております。
スマホ世代、WEB授業、WEB塾、WEB部活、WEB飲み会やミーティング等々、
その順応力は私のような50代にとり頼もしくも感じます。
その世代が実は今も、
「早く表参道に行きたい、原宿で買い物したい、渋谷でカラオケもコンサートも行きたい、スポーツ観戦したい!」、と申すではありませんか!
(でも、学校や塾は、「学校に行きたい人と、在宅でWEB授業を受けたい人の選択制が良いんじゃないのか?」等と、使い分けを志向しだしております・・・(冷笑))
やはり液晶画面を通した2次元では満足できない方々がいて、
3次元、つまりリアルな街に行きたがるのも納得できます。
それほど、3次元は情報も多く、刺激に満ちており、
安らぎも楽しさもあるのだと感じます。
そう、大好きなミュージシャンの音楽を、
「ミュージックビデオで見るのか VS 武道館のアリーナで見るのか」、
の違いだと思えば、さもありなんです。
この世代の中で、
感度の高い方々と表参道のイベントスペースが結びつくような気がしてなりません。
<無印良品マジック?=表参道マジック?>
「無印良品マジック?」
個人的に無印良品にはよく買い物に行きますし、楽しみなお店です。
アパレル、フード、インテリア等、なぜか欲しくなるところに、
無印良品マジックが存在していると感じます。
特に顕著に感じるのが「自転車」です。
無印良品のお店で見る自転車は、「シンプル、オシャレ、飛び出したフランスパンを前のかごに乗せ軽快に風の中を走るおしゃれな人」というイメージを感じます。
しかしながら、街の中で無印良品の自転車を見ると、お店の中で見るのとは違う印象に感じる事はありませんか?
「少し安いか、白は錆が目立つ、シンプルも寂しさ感あり、等‥」
しつこいですが私は無印ファンです。
この自転車が好き嫌いではなく、言いたい事は
「無印良品のお店にはマジックがある、そこにある物全てに適度なおしゃれ感あり欲しくなる!」。
そして、つい買ってしまうのです。
「表参道マジック?」
これもまた、無印良品と同じようなマジックがあると感じております。
無印良品のお店を、表参道という街に例えます。
この街に来ると、そこにある全ての物がいちいちお洒落で、ファッショナブルで、洗練されており、ラグジュアリー感もあり、ニュース性もあり・・・
欲しくなるのです。
ただ、無印良品とは購買行動が少し異なる例もあると思います。
「無印はそのお店で買う」
「表参道はそこで見た商品を違うところでも買う例がある」、というところです。
例①
表参道のブランド店で見た赤い小さなバッグ、
転職した自分へのご褒美で買うことは決めた。
ただ、同じ商品でカードポイントが付く新宿高島屋に買いに行った。
例②
表参道で見た、かわいいシンプルなジュエリーを買う事は決めている。
ただ、一生にそうそう買う事の無い高級品を買うなら、
やっぱり銀座の本店でラグジュアリーな雰囲気の中で買いたい。
この表参道で下見、品定め、ウィンドウショッピングをし、
他で買うという例がどの程度実在するのかは不明ですが・・・・
どうですか皆さん、ある気がしませんか!
逆に、銀座で観た高級品をわざわざ表参道で買う例ってあるのでしょうか?
新宿の百貨店で見つけた商品を、表参道で買うとしたら・・・
それがあるとすれば、
「誰かに買ってもらう、プレゼントしてもらう」というシーンではないでしょうか?
<お伝えしたい事>
日本の路面店舗エリアを一つのショッピングセンターや百貨店のように考えたとき、
1F正面の華やいだ雰囲気を醸し出し消費のスイッチをONにする役割を担う最強の街はやはり「表参道」。
冒頭このように記しております。
人の心を華やいだものに変える街、
ハレの日にハイな気分で訪れたい並木道、
明日表参道に行くなら何を着て行こうかと前日から考えちゃう街。
表参道は、このような効果を人の心に届ける事に長けています。
その表参道という街の中心は、やはり路面店舗です。
ただチャネルの変化、ECの台頭により少し元気の無くなった路面店舗に変わって登場してくれたのが、
そう「イベントスペース」です。
そのイベントは、さまざまの情報を発信し、人々を集客してくれます。
集客してくれれば、またそこからSNS等を中心に情報が拡散され、
また誘客に繋がるという好循環がループしだします。
その好循環のお陰で、街には家賃という収益効果もあります。
そのループの中で掲載された商品やサービスを、
他の街で購入する人も増えるでしょう。
今、イベントスペースは表参道に取って重要なMDとなっております。
もしこのイベントスペースが大きく減少すれば、
それに代わるテナントの業種は少ないと言わざるを得ません。
少なくなれば当然、
競争原理の勢いも落ち、
家賃負担率により払える賃料も減る、
ビルオーナーの収益を維持していくことも難しくなっていきます。
「見せ場=表参道」、「買い場=銀座、新宿」、と例えるならば、
その見せ場としてイベントスペースは重要です。
いつも展示が変わる事の楽しみは、
銀座「和光」のショウウィンドにも似た、
面白み、発見、好奇心の喚起につながります。
このコロナ下、
表参道のイベントスペースに関与する皆様も、
当然大変な状況にあると思います。
ただ、コロナ後の表参道の為にも、
何とか一定数のイベントスペースを維持頂き、
日本随一のファッションタウンとして、
日本の路面店舗街を牽引して頂きたいと日々感じております。
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